ずるずると、引き摺られるままにイタリアに滞在して、もう大分経った。
怪我はもう完治した。
結局、仕事も辞めたから俺を縛るものはないに等しい。
けれども。
本当に俺はここにいていいのか?
君で変わっていく10のお題
最近、よくそう考えるようになった。
ここはとても居心地がいい。
キャバッローネの人たちも、ディーノも、皆よくしてくれる。
けれども本当に俺はそれでいいのか。
今の俺の立場は、ディーノの……キャバッローネのボスの愛人のようだ。
実際、他人の目から見たらそうなのだろう。
でも俺はその立場でいたくない。
ディーノのことは…………まあ、その…………………好きだ。
だから、ディーノの傍が嫌になったわけではない。
俺も一人の男だ。
自分の足で生活して、ちゃんと自分の足で立って歩いていたい。
このままだと、ダメになる。
これまで築き上げてきた、ものが崩れていく。
それは俺のプライド。
俺だって伊達に最年少で捜査官をやってきてない。
なら、俺だってできることが……………あるはずだ。
ディーノも生きる世界で通じる、何かが。
それを見つけるためには―――――――ここじゃダメだ。
俺は一つの決心して、ディーノの元に行った。
このままじゃ、俺たちはダメになるから。
「………ッ、今、なんて言ったんだ?」
ディーノは案の定、引きつった笑みで俺を見た。
俺は先程言った言葉をそっくりそのまま、またディーノに伝える。
「 俺は、日本に帰る 」
大袈裟にディーノは椅子から転げ落ちてくれた。
そんなに俺が日本に帰ることが意外かよ。
それともなんだ、俺がイタリアにずっといるとでも思っていたのだろうか。
「い、いきなりなんだよ………ここが嫌か?」
「そういうことじゃない。ここはとても居心地がいいさ。だから。俺はここにいられない。
ここにいれば―――――俺はお前に甘えてしまうから」
「俺はそれでもいい!」
「お前はそれでよくても俺がよくないんだよ!!」
ディーノは優しい。
その優しさが今は――――俺をここに縛る。
「俺はお前と対等でいたい。お前が俺に甘えてきたように、俺もお前に甘えた。
でもこのままだとそれは維持できない。だから……………俺は日本に行きたい」
日本で準備をして。
また、ここへ帰ってきたい。
そのために、俺は行く。
ここはもう、俺の帰る場所なんだ。
きっと。
きっと、ディーノは分かってくれる。
俺はそう信じて話した。
やがてディーノは根負けしたように、椅子に身体を預ける。
勝った。
そう、確信した。
「――――ちゃんと、帰ってくるよな?」
「ああ」
「なら……………行って来いよ。俺は、待ってるから」
「………ありがとな」
椅子から飛び起きてきたディーノは笑って、言う。
俺を信じてくれた、笑み。
俺もつられるように笑った。
そう、これが新しい出発。
俺の見つけた、新しい道。
――――――――ディーノと歩むために、俺は行く
俺はディーノにそのことを囁いて、口付けた。
そのときこそ、君と居るに相応しい自分がいる。
君と居る時の自分
(背中を預けあう、そんな仲になりたいから)