温かかった。

温かくて、心地よくて、ずっとここにいたい。

そう思って目に入ったのは――――きんいろだった。














君で変わっていく10のお題
















「アル……………?」


始めは、アルジェントかと思った。
寝ぼけてて、アイツの金色をそう思ってしまったから。
だからあとでアルじゃないって気づいて、俺は自己嫌悪に陥りそうになる。




アルを殺したのは俺だ。




それは変わりの無い真実。
でも思い出したくなくて、ずっとしまってた俺の傷だ。
癒えそうで癒えない、カサブタ状態の俺の傷。
なのになぜ、今更思い出すのか。

――――決まってる、元凶は昨日会ったこいつだ。

イタリアマフィアのボスで、アルと同じ色のコイツ。
今は無防備に寝てる、こいつは。
アルと同じように笑って、俺を気にかけて。
アルと同じように俺に侵入してくる。

止めたいのに、止められない。

アルに……似ているからだろうか。
俺が初めて全幅の信頼を置いた、アル。
そいつに似ているからか?
俺がこいつを振り払えないのは。

こんな自分が嫌だ。

アルに囚われて、前に進めない自分。
罪を忘れようとしているわけじゃない。
背負っていくとそれはもう決めた。
それでも自分が嫌だ。

自己嫌悪。

ぐるぐるとそれは俺を支配する。
寝起きの頭はすぐに支配してしまいそうだ。
ふらり、と身体は勝手に動いて。
隣でまだ寝ている、こいつのその向こうにある拳銃を取ろうとする。

――――アレを使えば、もう終る。

そんな魅力に取り付かれて、手を伸ばせば。
届く前に強く、その手を取られた。


「………………寝ろよ、まだ朝は来てない」
「………………………………………………」


起きているのか、起きてないのか。
分からないまま、沈黙していると更に腕を引っ張られる。
そんなヤワな身体じゃないのに身体は重力にも従って。
再び、倒れこむように横になった。
更に何を企んでいるのか、そいつの腕は俺の背中に回されて、胸板を俺に押し付けてくる。


そんな抱き込まれた状態で。


俺は脈打つ、生きている証を聞いた。
あのときは聞けなかった、生きている証。



アルジェント…………



そのときゆっくりと、誰かが俺の髪を撫でた。
アルと同じ仕草。
アルじゃないと分かっていたから、その腕を撥ねつけたかったのに。


―――――できな、かった……………


温もりが温かくて、妙に安心して。
一生懸命張ったものが壊れてしまいそうになる。


それが怖くて、



俺は。



瞼を閉じた。












どんなに拒否してもそこに、失いたくない、温かさがあったから。























どうやら俺はまた眠ってしまったらしい。
今度、目を開けると薄暗かったさっきとは違って太陽の光が差し込んでくる。
まぶしくて、無意識に横を見ていた。

………いない。

あいつはいなかった。
いる方がおかしいから、気にしなかった。
ちょっと淋しかったなんてことはない。
だからそのまま俺は、ベッドにしばらく転がっていたが不意に、そして微かに、何かが聞こえた。


ドアの向こうで、話し声。


俺はゆっくりとドアに近づき、耳を押し当てる。
耳は良い方だ。
小さくても、聞き取れる自信があった。



聞こえたのは、


アイツの声。



『……で、………分かったか?』
『ツァンナ……に………た、と情報……………パートナー………アル……………死亡。
 ………だったと………………………はい、……………です』


ツァンナ、パートナー、アル、死亡。

聞き取れたのはそれくらい、それで十分だ。
奴らは俺のことを調べてる。
なるほど………俺を滞在させたのも、調べる時間を稼ぐためか。


やってくれる。甘く見られたな、俺も。


軽く自嘲して、俺はドアから離れた。
あのとき、取ろうとして取れなかった拳銃はこちらにある。
弾も十分。
俺が起きると思ってなかったのか………こういう行動に出ると分かっていなかったのか。
とても簡単に終わらせることができそうだ。


俺を謀った罪は…………………………………重いぞ。


久々の実戦の味に、俺は乾いた唇をぺろりと舐めた。





















―――――――剥がれたカサブタからは、また血が流れ出した。














孤独だった頃の傷跡

(剥がさないで、と暗に願ったのに)



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