会ったのはただの偶然。
けれども、それが俺を変えていくきっかけになるとは全然思っても見なかった。
そう、確か出会ったのは―――
君で変わっていく10のお題
イタリア旅行中のとあるカフェ。
俺はそいつと相席になった。
金髪でどこか人のいいそいつは、優雅に紅茶を飲んでいる。
でもどこか、一般人とは違う印象を俺は受けていた。
「なあ、名前なんて言うんだ?」
イタリア語か、と思った次の瞬間、そいつからこぼれた言葉は日本語。
イタリアには似つかわしくないその言語に、俺は少々驚いた。
そして少し探るような目でそいつを見てしまう。
ただ相席になった人物にそんな風に話しかけるか、普通。
「ああ、悪い。俺の名前、言ってなかったな。俺はディーノ」
「………」
俺の視線に気づいているだろうに、そいつは呑気に俺に自己紹介中。
相手に名乗られては、このまま無視するわけにはいかない。
俺が名乗るとディーノと名乗ったそいつは人好きのするような笑みを浮かべた。
「、な。いい名前だ」
「それはどうも」
褒められても困る。
確かにここでは珍しいのかもしれないが、日本ではごくありふれた名前だ。
それなのにこいつはどうして俺に構うのだろうか。
理解不能だ。
早々に立ち去ろうと思い、俺は席を立つ。
そのまま、そいつの隣を通り抜けようとすると腕をつかまれた。
顔からは想像できないような、握力だ。
「……まだ何か」
「いや、まだ話したいんだよ。………駄目か?」
そいつは窺うように俺を下から見上げてくる。
女ならすぐに落ちそうな表情だ。
けれども俺は男。
それにこいつは名前を名乗りあっただけ、相席しただけの仲。
俺が気にかける必要は―――ない。
「悪いが俺はアンタと話す要因が見つからない。じゃあな」
そう、再び立ち去ろうとした瞬間。
それは起こった。
いきなりの銃声。
俺たち以外に客はいない。
そして、その銃声は明らかに俺たちを狙っていた。
掠めた弾はそのまま、後ろの窓を突き破っていく。
俺の隣に座っていたそいつは、あろうことか机をその銃声のした方向に傾けた。
――机を盾にするつもりだ。
認識した途端、俺の腕がまた引っ張られ、その机の裏、いやそいつの後ろに庇われる。
「やっぱり来たか―――」
そいつは懐から銃と携帯を取り出した。
携帯を使いながら、そいつは引き金を引いているが―――
どう見ても当たっていない。
悲しいくらいだ。
しかも、どこかで兆弾しているのか弾は俺たちの方に来ている。
テーブルが盾になっているが、それもあまり頑丈なものではない。
現役は引退したんだが、と思いつつ俺はそいつの銃を奪った。
「なっ!?」
「見てるこっちが、心配になる。お前は見とけ。手を出すな」
驚いているそいつを尻目に、相手が潜む暗がりに向かって引き金を引く。
同時に小さな悲鳴が聞こえた。
――ヒット、だな。
俺はその調子で、狙撃手<スナイパー>を次々と狙っていった。
が、こいつが荒い弾使いをしたため、もう弾切れが近い。
「おい、弾」
「いや……大丈夫だ。俺のファミリーが来る」
そいつは不適に笑った。
ファミリーということは、マフィアか。
イタリアのマフィアは有名だが、こんなところで会うとは思わなかった。
と、いうことは俺はマフィアの抗争に巻き込まれたわけか。
そんな思考をしていると、相手側は狙撃することを諦めたのか接近戦で来た。
すぐに俺たちは周りを取り囲まれる。
そして誘導されるように真ん中に俺たちは背中合わせになっていた。
「お前、どうするつもりなんだよ。人を巻き込んでおいて」
「俺の得意分野は接近戦だ。見ときな!」
そいつは懐から、鞭を取り出した。
なるほど、こいつは鞭が得物か。
どうりで、銃が扱えなかったわけ―――
「ふざけてるのか、お前は」
「わ、わりぃ。こんなつもりじゃなかったんだけどな」
――でもなかった。
鞭を振るったはいいが、反対に俺たちがその鞭にまかれる状態で。
二人して身動きが取れない。
相手側もこいつが振るったときは構えてたが、それは今は解かれている。
手を出せない俺たちを見て、相手側は笑みを漏らした。
勝利を確信した笑みだ。
「こんなところでやられてたまるか!」
巻かれて手は動かせない。
ならば、と俺は足を使った。
が、使ったはいいが後ろのこいつが邪魔で。
俺はバランスを崩し、そいつの下敷きになった。
つくづく、むかつくやつだ。
「……ッ!どうしてくれるんだ、お前は!」
「大丈夫だ。―――あいつらが来た」
下から怒鳴ると意外にもそいつは冷静で。
俺は目を見張った。
さっきまでの頼りなさは………ない。
それどころか。
「大丈夫ですか、ボス!!」
「おせーぞ、お前ら!!」
巻かれていた鞭を簡単に解いて、そいつは相手側に攻撃を繰り出す。
部下と共に、風のような速さで。
意外だ。
意外すぎる。
俺は仰天するしかなかった。
俺がカフェで相席になったヤツは。
見た目よりもずっと強い