「遅いっ!」
「悪い、悪い。ちょっと色々あってさ」
現在時刻、8時少し過ぎ。
珍しくが遅刻して、リョーマと合流した。
人を待たせることには慣れていても、自分が待たされることに慣れていないリョーマは、ご立腹の様子だ。
「で、理由は?」
「そこで、ブルーコーポレーションの社長さんと会った。で、書類を拾ったら食事に誘われて………」
「ブルーコーポレーション?あのパーティでと踊っていた奴のこと?」
「よく覚えてるな」
なかなか良い人だったよ、と告げるに対し、リョーマは眉を顰めた。
他の依頼ならまだしも、あの“Dark Green”が絡んでいたあのパーティで知り合ったのだ。
もしかしたら、“組織”と繋がっている人物がいるかもしれない。
リョーマはそれを考えて、今でもに内緒でパーティリストを持っていた。
それだというのには。
警戒もせず、その人物と会った。
社長だろうがなんだろうが、との接触でブルーコーポレーションの社長、手塚国光はリョーマの中で要注意人物となっている。
「……で、しばらく俺はそこで働こうと思う」
「は?」
「だ、か、ら!俺はブルーコーポレーションで働くって言ってんの。勿論、ルドルフと両立させて」
「ダメ」
の言葉に、リョーマは即答した。
やばいかもしれない場所に、を行かせられるわけがない。
が行くのなら、代わりに自分が行ってもいいくらいだ。
だが、リョーマがそうに言うと。
「それこそ無理。リョーマはまだこっちのこと、よく分からないだろ」
「……ッ!」
その言葉で、リョーマの中で何かがキレた。
「子供扱いしないでよね。こそ、俺のこと何も分かってないくせにっ!なんか、嫌いだ!!」
リョーマの口から、そんな言葉が出た。
その中のとある言葉が、に何かを与える。
それは、決して良いものではなかった。
「ああ、分かったよ。リョーマが俺を嫌いって言うなら、俺はここを出て行く」
「勝手にすれば?俺は困らないし」
嫌な感じの笑みを浮かべて、リョーマは言う。
はそれに何も言い返そうとせず、ただ必要最低限のものを適当にバックに詰め込むと、カギを置いてリョーマのいるそこを出た。
「俺は、自分なりにリョーマのこと、分かってたつもりだったんだけどな」
去り際にぽつりと呟いたの言葉は、今のリョーマには届かない。
は出て行くと、ケータイを取り出した。
片手に手塚から貰った名刺に書いてある番号を押し、彼が出るのを待つ。
手塚は、すぐに電話に出た。
「国光」
『か。どうした』
「分かってるだろ?俺が電話をかけた理由くらい」
依頼、受けてやるよ。
はそう言葉を続けた。
『そうか。それはこちらとして嬉しいが、何か条件はあるか?なるべく、呑むつもりだが』
「そうだな…。依頼を受けてる間、泊まらせてくれると嬉しい。ちょっとトラブルがあったからさ」
ちらりとリョーマのいるであろう部屋の窓を見上げながら、は言う。
あの言葉で結構、は怒っているし、傷付いてもいるのだ。
『それくらい構わない。……今からいいか?』
「いいよ」
『なら、迎えに行く。場所はどこだ?』
「××の△○だよ」
『分かった』
その一言と共に、切られる電話。
それから幾分も待たないうちに、手塚の運転する車はの目の前に止まった。
「早かったね」
「あまり待たせては悪いだろう?」
「ま、そうだけど。社長直々とは恐れ入るね」
軽口を交わしながら、は車に乗った。
その車が遠ざかっていくのを、リョーマは窓からじっと見ていた。