「手を上げろ!!」


入ってきた黒服の男たちはありきたりな強盗のようなセリフを言った。
だが四人はそいつらを放ったままひそひそと話し始める。



「今時、あのセリフはないんじゃない?」
「古いよなー…」
「俺、別の言葉の方がいいと思うんですけど」
「つーか、あいつら激ダサだな」



四人は失礼なことをそれぞれ口にする。
一応、本人たちは小声のつもりなのだが、男たちにはばっちり聞こえている。
そして、かなり言いたい放題されていた男たちがついにキレた。


「てめーら、いい加減にしろよ…。特に昨日邪魔してくれたそこの奴!」


リーダー格の男が、ビシィっとを指差した。


「あー…、俺?」
「そうだ、お前だよお前!!おかげでなあ…金もらえなかったんだよ!」

「こいつら、“組織”に雇われた奴にしてはレベルが低いな」
「人選、間違えてるよね、絶対。下っ端が選んだんだと思うんだけど、俺のこと侮りすぎ」



またもや男を無視してはリョーマと会話をしていた。
男もさすがにキレて、ライフルをに構える。
そして、引き金を引こうとした―――が。


「店内の中での武器のご使用はご遠慮くださいね」


その前に鳳が笑顔で男を回し蹴りをして、倒した。


「おい、長太郎。あんまり店のモン壊すなよ」
「大丈夫ですよ〜、宍戸さん。壊れたら弁償してもらいますから」


宍戸と会話をしながら、鳳は次々に男を薙ぎ倒していく。
一方とリョーマはカウンターの傍らで、宍戸に出されたファンタを飲んでいた。


「…これ、なかなかいけるね」
「だろ?俺のおすすめ」


鳳が最後の一人を倒し終わったころには、二人はデザートを食べていた。
もちろん、店内を騒がせている男たちの奢りだ。
ただし、男たちに了解は得て無いが。


「宍戸さん、これだけあったら足りますか?」


そう言って鳳は、男たちから巻き上げた金をカウンターに置いた。
数十万はありそうだ。


「ん、余裕だな」


そして宍戸はそれを抱えて、カウンターの奥の更に奥、人目のつかないところにあった金庫にそれを置いた。
鳳はその間に、男たちに口封じをして店の外に放り出していた。


「…。あの、鳳って人何者?」
「この店のもう一人の店長兼用心棒…ってとこ。あ、長太郎の入れたコーヒーは美味いぞ」


はここのメニューの中でも特に好きなもの…チョコレートパフェを食べながらリョーマに答えた。
が、半分答えになっていない。


「あ、亮!パフェおかわり。ついでにリョーマの分も頼む」
「なに勝手に決めて―――」
「分かった。楽しみにしとけよ。今日はサービスしてやるぜ」


リョーマの声を遮り、宍戸はパフェの用意を着々と進めていく。
どこまでも自分のペースでいくに、リョーマは呆れながらも楽しそうにしていた。

















「で、。早速明日から仕事か?」
「その予定」


本日二個目のパフェを食べ終え、現在は鳳の入れたコーヒーを飲みながらは幸せそうに答える。
宍戸は、会話をしながら皿を洗っていた。


「リョーマくんはそれでいいの?さん、ああ言ってるけど」


宍戸と話しているから少し離れた場所に座る、リョーマに鳳は話しかけた。
ちなみに鳳は、洗い終わって拭かれた皿を食器棚に戻している。
つまり背を向けてはいるが、鳳はリョーマの真正面にいるのだ。


「…以外に、俺行くところないし。っていうか、の隣が俺の居場所なんだよね」


リョーマはなにやら宍戸と漫才をやっている(ように見えるだけだが)に目を向けた。
その瞳は、鳳が見た中で一番優しい。


「そっか…。なら、いいんだ。俺も『ICE』が居場所だからね。リョーマくんも、自分の居場所はしっかり守るんだよ」


まるで、幼児に言い聞かすような言葉に、リョーマは少し不機嫌になった。
が、『自分の命は自分で守れ』ぐらいしか言われた事の無いリョーマにとってその言葉は新鮮だった。
鳳はリョーマの反応をしばらく窺っていたが、そのうちたちの方へ行ってしまった。
そして、鳳が向こうへ行ってしまってから。


「…当然だし」


リョーマは誰にも聞かれることのないように、密かに呟いた。


「リョーマ!!」


その直後、が後ろからリョーマに抱き付いてくる。


「いきなり、何?」


をなすがままにしていたが、リョーマの内心はバクバクだった。
さっき呟いた言葉が、聞かれてはいないかと心配なのだ。
だが、それも杞憂に終わりそうだ。
なぜなら。


「今日は『Shine Night』に新たなメンバーが加わったから、祝いだ」


そんなリョーマの気も知らず、ははしゃいでいるからだ。
こんな楽しい気分になったのは、初めてだった。
昨日、と出会ってからこんなことがたくさんあった。
だから、リョーマは今“組織”を抜け出したことを後悔していなかった。
抜け出したからこそ、に出会えたのだから。
だが、これから『月の涙』を巡って様々なことが起こるだろう。
だからこそ、リョーマは。


この時間を精一杯楽しもうと心から思うのであった。