あれから数時間後。
はようやく目を覚ました。
「あー…リョーマ?」
目が覚めて、一番に目に入ったのは天井ではなく心配そうにを見ているリョーマだった。
は寝起きのボーっとした頭で、意識を失う前のことを思い出してみる。
確かチップを拾って…。
「ッ!そうだよリョーマ!チップはどうしたんだ!?」
「忘れたの?チップはここにあるじゃん」
リョーマはそう言って、少し罰が悪そうにの首筋の左側を示した。
「へ…?俺の…ここ??」
「だからそう言ってるじゃん」
リョーマは呆れたようにに言って、が覚えていなかった出来事やチップについて話し始めた。
「本当にここにあるのか?」
「だからさっきからそう言ってるじゃん。ま、入ってるって言うよりは同化しているって言う方が適切かもね」
は大した驚きも無く、あっさりとチップが自分の中にあることを受け入れた。
そして悲観的に考えるどころか、楽観的に考え始める。
「なぁ、リョーマ。これってその“組織”の奴らが奪還しに来るよな?」
「絶対ね。これは“計画”からはずせないモノみたいだし」
「なら、このまま俺の中にあったほうがよくないか?向こうもまさか俺の中にチップがあるなんて考えないしさ」
「それもそうだけど…」
「取られる心配もないし、“計画”は進めることができないから一石二鳥だろ」
俺の中に入っていいんじゃん、とは納得する。
そして、なにかごそごそと外出準備を始めた。
「どこか行くわけ?」
「ちょっと昨日の報酬の受け取りと新しい依頼がきてないか見に行くだけだ」
「へぇ…て何かやってんの?」
リョーマが聞くと、は財布からカードを取り出した。
裏で作られてた、コンピュータを誤魔化す機能があるものだ。
同時にそれは、裏で自分を証明するものでもある。
「何でも屋…『Shine Night』??」
「そ。俺は何でも屋をやってんの。ちなみにリョーマと会ったのも依頼が終わったあとなんだ。それと、リョーマもこれに加わってもらうから」
「なんでさ」
「“働かざる者食うべからず”って言うだろ?」
「…まあ、そうだけど」
リョーマの脳裏に嵌められたという言葉が浮かんだ。
どうやらは、なかなかの、食わせ者のようだ。
「んじゃ、リョーマも行くか。カードも作らないといけないし、服も買わないといけないし…。
何にしたって、あそこに行かなきゃどうにもならない」
はリョーマの手を引っ張って玄関に向かっていった。
「喫茶店…『ICE』?ここがそうなわけ?」
「そ。情報屋と仲介屋をやってるんだ。俺も前から世話になってる」
ここの料理も結構おいしいし、とは言って『ICE』のドアを開けた。
ちりんちりんとドアの上部に付けられた鈴とともに、二人は入店した。
入って少し奥に入ったところには、カウンターに人が二人いる。
「あ、さん」
「じゃねーか。報酬と依頼が一件着てるぜ」
カウンターから、店主である鳳長太郎と宍戸亮が話しかけてくる。
は既に常連の中でも格上の常連なので二人とは、他の客よりも仲がいい。
歳が近いせいもあるだろう。
「じゃ、見せて。あ、これ俺のパートナーのリョーマね」
宍戸から昨日の報酬と新しく来た依頼を見ながら、隣にいるリョーマを紹介する。
これって扱いは無いだろ……
そうリョーマは思うが、何分居候の身。
特に強いことはまだ、いえない。
「さん、遂にパートナー決めたんですか?」
「んー、まあそうなるかなー……」
依頼書を黙読しながら、は半ば生返事で鳳に返した。
隣のリョーマは、宍戸から出されたファンタを黙って飲んでいる。
「亮、この依頼主ってさー…」
「ああ、そいつはな…」
新しい依頼について話し合っていると宍戸。
残された鳳とリョーマは微妙な心境だった。
(話しかけたほうがいいのかな…?一応、さんのパートナーなんだし)
(……でかい奴)
とまあ二人の考えは色々だが、取りあえずは自己紹介をしようということに二人の考えは一致した。
「俺は、鳳長太郎。ここで店主兼、ようじ………」
鳳が自己紹介をしようとしたところで、パリンと音がした。
ガラスが割れた音だ。
同時に黒服の男数名が、中に流れ込んでくる。
どうやら、昨日の奴らしい。
も鳳もリョーマも宍戸にも、それに体勢を攻撃しやすいように構えた。
そして喫茶店『ICE』は、一気に臨戦状態に入るのであった。
どうやら、平凡な日々はとリョーマを受け入れてくれないらしい。
は密かに、苦笑した。