正直、あまり驚いてなかった。
ああ、やっぱり行くのかと思った。
でもやっぱり、悲しかった。


知ってたか、

俺は、お前のイギリス行き、ずっと前から知ってたんだぜ――――






















まあ、気づいたも何もない。
俺はただ、お前がその書類を出すところを見たってだけだ。
が前からイギリスに行きたがってたことぐらい、俺は知ってる。
だから、お前は行くんだろうなと思った。
でも…………と忍足が一緒に住み始めて、俺も一緒になって。
正直、忘れていた。
このままでいたかった。
お前と思っていたのと同じコトを俺も思ってた。
忍足もそう思ってただろうが、俺やとはちょっと違うだろう。
俺もも、このままでいてはいけないと知っていた。
は俺たちに依存し、俺たちはに依存する。
それはもう、恋とか愛だとかそういう話じゃない。
俺たちは駄目になる。
そんなレベルでの話だ。
だから、俺は止めない。
お前の決めたことだ。
俺が口出すことじゃねぇ。

だが、できることはなら…………黙ってるんじゃなくて話してほしかった。

分かっていたことだ。
でも、が一言行ってくれれば俺も笑って送り出せた。
はっきり言えば、悔しかった。
俺はその程度の男だった、ってわけだからな。
が悩んだのは分かる。
悩んで、悩んで、不安だったは俺たちも同じだから。
は昔からそうだ。
溜め込むだけ溜め込んで、一気に吐き出して。
そんなに不安を溜め込ませたのは俺たちだ。
もっと気づいて、言葉をかければこんなことにならなかったのかもしれない。
悔しくて、でも悟られたくなくて俺は拳を握った。
所詮は俺も忍足も子供だ。
譲れないところはとことん譲れない。
だから、あの約束なんか馬鹿らしかった。

俺の初恋はだ。

それこそ、何年越しだか覚えちゃいないくらい。
三年なんて短い方だ。
初恋は実らない、とかなんとか言われてるらしいが俺は絶対実らす。
そう、あのとき決めた。
ゆえに、俺が以外を好きになることは無い。
以上に好きなヤツができるわけも無い。
馬鹿だ、は。
自分で、自分を忘れろって言っておきながら自分自身が傷ついてるじゃねぇか。
そこははっきり言えばいいんだよ。

「俺を忘れるな」

その一言だけで俺は待っていられる。
お前はもう少し執着すればいい。
俺や、俺だけじゃ駄目なら忍足でもいい。
大人だからって、気を張っていればいいってものじゃない。
安心して、身を任せることができるヤツが必要だ。
でもが、そうできなかったのは。





きっと、俺が弱かったから。





だから俺は強くなろう。
強くなって、お前を支えてやる。
支えて、支えられて。
それが理想の関係。
は何か考えがあって、イギリスへ行く。
俺は、日本で強くなる。
テニスにも、勉強にも、精神的にも。
だからお前は何も考えなくていい。
後悔しなくていい。
晴れやかな気持ちで、行ってこい。




俺は約束通り、あそこで待つ。




お前をびっくりさせてやる。



だから後悔はしてないぜ。




















―――けれどもそう思う俺は、これから先お前のことばかり考えてしまうだろう。



それぐらいは許せ。



なんたってお前は俺の……………初恋なんだ。




もちろんそれは、叶う初恋。







いや、絶対――――叶えてみせる。

























「あ、あれやない?さんが乗っとる飛行機」
「バーカ。あれは違うだろ。方向からして正反対じゃねぇか」
「跡部は細かいなぁ」


隣で忍足が笑っている。
何を考えたのか知らないが、こいつは俺と同じく屋上に来ていた。
が乗る飛行機なんて、ここからじゃ見えないだろうに来ている。
馬鹿らしいと言えば馬鹿らしいが、俺はそれを言えない。
なぜなら俺が来た理由は…………こいつと似たような理由だからな。
なんだかんだいって同じ人を好きになっただけあって、忍足と俺の思考は似ているのかもしれない。
だからと言って――――を譲る気にはならないけどな。


ずっとずっと、想い続けたこと。

それだけは誰にも負けない。


もちろん、それは忍足にだって………にだって。
負けてない。
三年後にはもっとそれは強くなっている。




そして三年後、そのときにはきっと………………

















俺はお前を離さない。


















そう呟いて俺は空を見上げた。



へと続くだろう、空を。
























(俺は、お前のために強くなる)