裏方で色々と指導することが多くて、表は一度も出てない。
ようやく出ることができたのは、文化祭の三日前だった。


先生!」
「鳳くんか。似合うな、その服装」
「いえ、跡部先輩と忍足先輩には負けますよ」


現在の鳳くんの格好は、まさにホスト。
上背もあって人好きのする笑みを浮かべているから、このまま街を歩けばすぐにスカウトされそうだ。
もちろん、本業の方に。
………そういえばアイツはいつ来るんだろうか。
一応、メールは入れといたんだが………アイツも忙しいからな。
なにより、俺たちとは昼夜逆転生活を送ってるんだし。


「そうだ、その二人知らないか?伝えたいことあるんだが…………」
「先輩たちならさっきまでいたんですけど…………宍戸さん、知ってます?」
「いや、知らねぇな。こっちはこっちで、色々と配置変えがあったからな」


……ほんと、どこに行ったんだ?
せっかく、協力者を連れてきてやったのに―――――


「誰だ、お前!!」
「せや、なんでさんの名前知っとんや!?」
「知り合いだからに決まってるだろ。ああ、お前らじゃ話になんない。を呼べ、を!!」
「「誰が呼ぶか!!」」



どたばたと廊下を走る音、に紛れて聞こえる二人の声。プラス、アルファ。
意外に来るの、早かったな…………。


!お前、どういう生徒の教育をしてるんだ……!」
「俺に言われても………。まあ、久しぶり」


これが終わったあとに店に出るのか、恭介はきっちりとした服装だ。
きっちりといっても―――ホスト、だからそれ相応の格好だけど。
恭介が教室内に入ってきた後に、また足音が聞こえる。
侑士と景吾だな。


さんっ」
ッ!!」
「「こいつとはどういう関係だ!?!?」


ビシッと二人は恭介を指差す。
恭介は多少眉を顰めながら、俺の方を見た。


「えらい思われてるじゃねぇか、センセ?
 ――――でも、人に指を差すなぐらい教えとけよ」


そう言って恭介はまず、跡部のこめかみを拳骨でぐりぐりと回した。
しばらくそれをやった後、今度はそれを忍足にする。
うーん…………さすが、恭介だ。
学生時代から変わってない。


「地味に痛いで………で、誰なん?この人」
「……俺と同じ氷帝OBで友人だ。今回、ホスト喫茶やるって聞いたから参考に呼んだんだ。
 ちゃんと現役のホストだぞ。ほら、恭介。挨拶挨拶」


俺が促すと、恭介は渋々といった感じで向き直る。
景吾も侑士も立ち直ったのか、接客をするレギュラーたちを俺たちの目の前に集めた。
見たことは無いが……ホストの集まりってこんな感じか?
さしずめ、恭介はオーナーってところだろうな。
で、No.1が景吾。No.2は侑士だな。
――――はまりすぎて怖い。


「……さっきのの紹介にもあった通り、ホストだ。名前は高木恭介。
 ホストに関して少し教えてくれとのことだが……俺だって現役だ。
 甘くねぇことを覚悟しとけ。以上」


恭介はそういうと、ネクタイを少し緩めた。
やる気満々じゃないか…………これは覚悟しといた方がいいぞ。


「まず服装指導と適性検査だ。そこのでっかいヤツ銀髪、ちょっと来い」
「はい」


ちょっと戸惑いつつ、呼ばれた鳳くんが恭介の傍に立つ。
恭介は鳳くんをじーっと見ると、少しだけネクタイの位置を直した。
………何がしたいんだ?


「こいつが服装の見本だ。名前は?」
「鳳です」
「O.k。鳳な。鳳は背も結構高い。好青年みたいな笑顔がポイントだな。
 お前みたいなヤツは幅広いストライクゾーンを持ってんだ。
 それを生かせ。もういいぞ」


ぽん、と軽く背を押して鳳くんを元に戻すと次はそのダブルスパートナーの宍戸くんを呼んだ。
一体、どういう順番でやってるんだろう………。


「お前は、まだこういうの着慣れねぇみたいだな。
 本業にするとそれは許されないんだが……お前はそれを生かせ。
 そういう慣れてねぇ部分を売れ。ちょっとぐらい世話を焼かせた方がいいんだ」
「は、はぁ………」
「返事ははっきりとな。まあ、少しくらい恥ずかしがってるぐらいが受けがいいかもしれないけど」


さすが現役ホスト。
伊達にNo.1を張ってるわけじゃないというわけか。
かなり的確に指示してる。
客層を把握してるんだな………来るのは生徒に若い女性とかお母さん方だし。


「…………大丈夫か、お前」
「眠いC−…………」


他に色んな指示をしていて、恭介はふと芥川くんに目を向けた。
案の定、芥川くんは眠そうだ………。


、こいつどうしたんだ?病気か?」
「病気じゃないよ。ただ芥川くんは………うん、寝るのがすきなんだ。いつも寝てる」
「………………………そうか。まあこういうやつに限って臨機応変に対応するんだ。放っておこう」


………根本的なところは変わってないんだな、恭介。
まあ、芥川くんに関しては俺もそう思う。
なんだかんだいって、やるときはやるんだ。
寝てなければ、の話だけど。


「まあ、学生ができるのはこんなもんだ。本格的にやろうと思うな、気楽にいけよー。
 お前らが緊張してたら、客も寄らないぜ。あと――――」


……………………………………あれ。
侑士と景吾は?
放っていいのか??
そんな俺の心中を覗いたかのように、恭介は言葉を続ける。


「そこの二人。忍足と跡部……だったか。ちょっとと来い。
 お前もいいな、?」
「ああ、別に構わないけど………別室がいいか?」
「そうだな。聞かれたら困るし」


き、聞かれたら困る話って何なんだよ恭介……!
それに侑士と景吾まで呼んで――――。
とにかく俺は混乱しながら、恭介を英語準備室まで案内した。





















「 お前ら、睨み過ぎ 」


入って一言目がそれだった。
俺にはさっぱり意味が分からない。


「俺はお前を睨んだ覚えは無いぞ」
「そりゃそうだろうな。俺はお前に睨まれてねぇし。
 睨んだのはそこの二人。いやー、視線が痛くて痛くて。大変だったぜ」


いや、絶対お前は堪えてないだろ。
なんだよその新しい玩具を見つけて嬉しそうな目は。


を俺に取られると思ったんだろ?わっかいなー」
「………せやかて、なぁ?」
「ああ。お前がに色目を使うから――――」

「はっ?恭介が俺に色目???」


使われた覚えないぞ!?
至って普通に話してただけだ。
なのになんでお前らにはそう見えたんだよ……!」


「うん、若い若い。職業がアレだからそう見えたんだろうなー。
 まあ、安心しろ。俺とは何にも無い」
「むしろあったら怖いぞ、俺は」
「俺も怖いな」


くすくすと笑い合う俺たちに、呆気をとられたように侑士と景吾がしている。
その表情は、年相応で。
それがおかしかったのか、恭介は更に笑う。


「お前ら、やけに大人びてんなーと思ったらそんな顔もできるじゃないか。
 うん、たまにそういうの見せてやると女性は喜ぶぞー」


ほんと、恭介はホスト思考だ。
ホストになるべくして生まれてきたといっても過言ではないだろう。
俺はそう思える。


「あとは、そこの忍足とやらが客層を見極めてそれぞれの分野のヤツを手配するとうまくいくぞー。
 お前、そういう人間観察得意だろ?」
「まあ……そうなるんやないですか」
「だろ?ならそういう役はお前が適役」


飄々とした態度の恭介に毒されたのか、いつの間にか和やかムード。
さっきまでの警戒していた景吾と侑士はいなくなっていた。
恭介マジックだ。


「じゃ、俺はここまでで。俺、もう行くから」
「ああ、ありがとう」
「いいって、面白いモン見れたし」


にやりと笑って、恭介は俺を見た後そのまま景吾と侑士に視線を滑らせた。
――――何か、企んでる。




「跡部に忍足。あまりを無理させんなよ。2対1なんだからなー」





……………………………………………………………………………!?





「恭介っ!!!!!!」
「あっはっはっは、じゃあなー」



最後の最後で爆弾発言してくれた恭介は、そのまま帰って行ってしまった。
まさかバレてたとは―――――――いや、あいつなら気づいてそうだったけど。
俺はぐったりと、ソファに座り込んだ。


「恭介め…………」
「やっぱり気づいとったんやろなー……散々、俺らで遊びよったし」
「ああ。完璧に遊ばれてたな」
「その中には俺も入ってるよ…………」


無駄に疲れて侑士も景吾も動く気を失くした。
三人でソファに座ってぐったりと、だれる。










身にもなったが、それ以上に疲れた一日だった。