「 あ 」


準備室で次の授業の資料を作成中に。
俺はとても重要な事に気づいた。
時は十月中旬。
景吾の誕生日は、十月四日。
侑士の誕生日は、十月十五日。
気が付けば、その誕生日は過ぎていた。
二人とも、何も言ってこないから気づかなかった…………。
すっかり忘れてたけどさすがに悪い気がする。



とにかく何かするべきだと思う、俺だった。



















よって、俺は協力を旧現テニス部レギュラーに頼むことにした。
あの二人との付き合いは長いし、性格もよく分かっている。
テニス部レギュラーの子たちは、快く頷いてくれた。
―――と、いうか反対に懇願されてしまった。
なんでも、


「あのときの先輩たち、すごかったんですよ!!」
「まあ何がすごかったって、あのシゴキようだな」
「そうそう!まるで悪夢みたいだったぜ」
「……ウス」
「……まさに鬼の形相だったC」


あの樺地くんまで力強く頷く。
そしてあのときを思い出す皆は、どこか遠い目だ。
ただ一人、滝くんだけは笑ってたけどな。
そうして快く受け入れてくれた皆は、今日の放課後またテニス部の指導を行うことにしたらしい。
どう手を回したのか、榊先生からのお願い(という名の命令だ)という形で。
これなら、二人も行かざるを得ない。
こうまで協力してくれたのなら、答えないわけにはいかない。
それに誕生日を忘れていた俺も悪いしな。

そうして俺はかつてないスピードで仕事を終わらせると、車を走らせた。

まず始めに―――プレゼント選び、だな。
きっと誕生日にはたくさんのファンからもらってるはずだ。
それこそ手作りの何かからブランド品まで。
となると、下手なもんは選べないな…………。
むむむむ…………。


「なにかお困りでしょうか!?」
「え、あ、だ、大丈夫です!!」


難しそうな顔でもしてたんだろうか。
俺は店員に話かかけられた。
い、いきなりって心臓に悪いな………寿命が縮むかと思った。
あ、でも店員に相談するのは悪い手段じゃないな。
まあ………男同士、っていうのはさすがに言えないか。
とにかくそういう部分を伏せて説明したところ、店員さんは笑顔であるプレートネックレスを差し出してきた。
数は三つ。
何の変哲も無い、シルバーのプレート。
まあこれなら行けるかもな。
あとで彫り込もうと思えば、彫れる。
表は無地でも裏の方にそれぞれの名前の頭文字でも入れとけばいいし。


あっさりと俺はそれに決めた。

文字を彫ってもらうから、一時間後に取りに来ることにして。


俺はスーパーで食品を大量に購入すると、マンションに向かった。
なんせ、作る料理が料理だ。
あの景吾の舌を満足させる(ことが目標)料理を作らなければならない。
ケーキも俺の手作りだ。
こんなに手の込んだもの、作ったのは勿論初めてだ。

―――可愛い彼女に作ってあげたかった、という本音は置いといて。

俺はメインとデザートのそれを時間をやりくりしながら作っていく。
テニス部の時間はあらかじめ把握してあるが、それでも急がなければならない。
まあ、終わったら代表の滝くんがメールしてくれることになっているから大丈夫だろうけど。
それに作り終わったら、プレゼントも取りに行かないといけない。
やることはたくさんある。



そして俺がどうにかそれらを終えた頃、滝くんから連絡が来た。

準備は万端。

さあ、いつでも来やがれ。




















僅かな足音。
微かな景吾と侑士の声。
俺は玄関の前にクラッカーを持つと、そのドアが開く瞬間。
勢いよく、クラッカーの紐を引いた。



「Happy Birthday!!」



思ったとおり、目を驚きに見開く二人。
ぱちぱちと瞬きを何回か繰り返したあと、始めに行動したのは侑士だった。


さん!」
「ぅわっ!」


真正面からダイブしてきて、俺に抱きつく侑士。
遅れて、景吾がわざわざ俺の背後に回って抱き締めてきた。
こうも素直に嬉しさを表現されると、ちょっとくすぐったい。
けれども、まだ出迎えただけだ。
まだ料理もプレゼントも出してない。


「玄関にいつまでいても仕方ないだろ?中に入ろうな」


そう言ってするりとソフトに二人を避け、その背中を押す。
一番先頭の景吾がリビングのドアを開けた。


、これ………」
「どうだ。お前たちのために頑張ったんだぞ。……………ちょっと、遅れたけどな」
「でも祝ってくれるんやろ?―――ならそれで俺は十分や。さんがおるんやもん」
「ああ。他の奴らに祝われるよりずっといい。がいるならそれだけで最高の誕生日だ」


聞く方が恥ずかしい言葉を次々に言ってくれる、二人。
きっとそれは本心からの言葉だ。
けどまあ………俺が素直に受け取れるわけなく。
ごまかすように二人をまた急かして、席に着かせると料理を食べるよう言い聞かせた。
その食事中にも、二人は笑顔全開でおいしいといってくれる。
思わず、俺も嬉しくなって食事中の会話はとても弾んだ。
今まで一番、弾んだかもしれない。
プレゼントもとても喜んでくれて。
何を彫るか、考えると二人揃って言ってくれた。
俺は二人が彫ったことを、同じように彫ろうと思ったから何も言わなかったけれど。
きっと、分かってるんだろう。



とても楽しい、誕生日のお祝い。



それはとても遅れたけど、二人は笑ってくれる。



それだけで幸せな気分になれる俺がいた。



その夜も俺は料理と同じように、美味しく頂かれたわけだけれども。



終始、幸せな気分でいられた。














今はどうか、まだ三人のままで。










そう願いながら、俺は二人に間を挟まれ眠った。




















―――――幸せだよ







生まれてきてくれて、ありがとう