「二人と付き合う」
「「は??」」


夏の日差しも残る中、跡部と忍足の間抜けな声が屋上に響き渡る。
対して、は満面の笑み。
その顔に迷いは無い。


「どういう、ことだ」
「せや。きっちり説明してもらわんと」


動揺する跡部と忍足がに詰め寄る。
が、それでもの笑顔は変わらない。


「別に、二股かけようってわけじゃない。
 ……ただ、俺が選べないだけだ。今は、二人とも同じように好きなんだ。
 納得がいかないっていうのは分かるさ。でも……もう少しだけ、時間をくれ。
 そうしたら、きっと選べる。悔いの無いように選べる気がするんだよ」


真剣なの表情。
跡部や忍足はなにも言うことができない。
惚れた弱みからだろうか。


「……ほんまに、もう少しだけ時間があったら選べるんやな?」
「ああ」
「迷わず、後悔せずに……か?」


頷く
考えて、考えて、滝の言葉ではこうすることにしたのだ。
今の二人の位置は、まったく同じ場所だから。
だから、選べなかった。
の言葉に、忍足と跡部は目配せした。
二人とも、思うことは同じ。


「しゃあないわな」
「ああ。もう少しぐらい待ってやるよ」
「ただし、卒業までに答え、出してや」
「それ以上は俺たちが待ちきれないからな」


微かに笑みを浮かべて、跡部と忍足は言う。
かなわない。
そう、二人は思っていた。


「………ありがとう」


ふわりと笑う
そんなの傍に、二人は立つ。


「それなら条件は同じじゃねーとなぁ?」


跡部がにやりと企むような笑みを見せた。
はその言葉の意味がよく分かっていない。
が、忍足にはどうやら伝わったらしい。


「まさか、跡部………!」
「俺も一緒に住んで構わねーよな、
「あー……えー…」


跡部の言葉に詰まる
それもそのはず、の住むマンションはそんなに部屋数がないのだ。
忍足が来て、ちょうどという感じで、跡部が住む余裕など無い。


「部屋数が足りないなら、俺のマンションを提供するぜ?
 それともなんだ、忍足とは住んでおいて、俺と一緒に住むのは嫌か?」


こうまで言われては、断り切れない。
は頷いていた。


さん………」
「悪いな、侑士。引っ越すことになるけど………」
「別に忍足が嫌ならやめてもいいんだぜ?が引っ越すことに変わりはねぇ。その代わり、フェアじゃなくなるけどな」


それはそれで、俺にとっては好都合だ
と、小声で呟く跡部。
その呟きはには聞こえなかったようだが………忍足には完璧に聞こえていた。


「ええで、それで。勝負はフェアやないと面白ないしなぁ」


それが忍足の闘争本能に火をつけた。
二人はを間に挟むようにして、火花を散らす。
は慌てて、二人の間に手を振り落とした。


「ほら、二人とも始業式の時間だぞ!」
「んなもん、今は関係ねーよ。なぁ、忍足?」
「そうやなぁ。今は跡部との決着をつけるんが大事やし」


睨み合い、動こうとしない二人。
勝負はスタートしたのだが、これはいくらなんでも早すぎる。
さすがにも選択を誤ったかと思った。
それより、時間だ。
は動こうとしない二人に溜息をつくと、ゆっくりとその場を後にした。
そろりそろり、と階段に向かって歩く……が。


「「(さん)!!」」


逃げ出そうとするに気づき、声をかける二人。
そして叫んだ瞬間、は走り出していた。
必然的に、二人も走り出すことになる。




やっぱり、跡部と忍足は。

には勝てない。