さんに取り付けた、一つの約束。

夏休み最後の日にある、夏祭りに一緒に行こうというもの。

俺は、その日にさんに告白することに決めとった。

その為に、花火がよぉ見えるポイントを探したり、色々と下準備をしたんやから――――
































「……さん、どこ行ったんやろ…………」


待っとって、って言うたのに、あの人はどこかへ行ってしもうた。
さんが約束を破るはずは無い。
そういうことはできん人やというのは、よぉ分かっとる。
考えられるのは……この人ごみやし、迷子を助けたっちゅうところやろう。
さんはぶっきらぼうなとこもあるけど、優しい人やからな。
でも………誰かに付いて行ったちゅうことも考えられる。
誰かに声をかけられて、そのままお持ち帰り……………とかな。
……………あかん。
マジでありそうや。
結構、鈍い人やからな……ホイホイ付いて行ったんじゃないやろか。
それなら、こうしてはおられんわ。


さんを探さんと!!


………というわけで俺は、ベンチから離れて辺りを捜索することに決めた。
けどな。
この人ごみの中や。
さんをどう探せっちゅーねん。
無理やろ。
いや、意地でも見つけたるけどな。
さんに危機が迫っとるんや。
こうしても埒があかん。
とりあえず、手当たり次第、探してみるしかないやろな。
さんが行きそうな場所、分かっとったらええんやけど………。
………そういえば、この祭り、結構昔からあった気ぃするな。
もしかしてさんも、来たことがあるんとちゃう?
そうすると、花火がよぉ見える場所も知ってそうや。
それが俺の知っとる場所とは違うかもしれんけど………。


行ってみるしかないやろな。





























……ちゅーわけで、来てみたんやけどな。
なんで跡部がおるんや?


「……


しかも、意味有り気にさんの名前、呟いとるし。
……もしかして跡部は、ここにさんと来たことがあるんやろうか。
それなら、跡部がここに来たことも納得できる。
つか、跡部がこないなとこに来るの、それくらいやろ。
俺にはお見通しやで。


俺がそんな風に思っとったら、人の気配がした。
ついでに、がさがさと草を掻き分ける音がする。
俺は慌てて、木陰に隠れてそうっと覗き見た。
そこにおったんは…………さん。
俺を探しとったんやろう、額には汗が滲んどる。
さんの目は驚きに見開かれとった。


「けい、ご」


呟かれる、跡部の名前。
呼ばんとって、と言いたかった。
さんを独り占めしたい。
跡部に、やりたくない。
どろどろとした感情が、湧き上がって来る。
さんの、言葉一つで。
俺はこんなに振り回されとる。





跡部は呟かれた己の名前に反応して、さんの名前を言った。
その言葉に込められとるんは、俺と同じ感情。
同じ想い、同じ感情。
跡部も俺も、さんに抱くものは唯一つ。
経緯がどうあれ、同じなんや。


「……に、伝えたいことがある」


けれども、俺は跡部のこの言葉で頭を殴られた感じがした。


先を越されてしまう。


ただ、そう思った。
躊躇なんて、しとる暇なかった。
だから、俺は。


さん、好きや。愛しとる。初めて逢った時からずっと、好きやった」


跡部と時を同じくして、告白した。



今度こそ、さんの瞳に俺が映るように願って。