「朽木、いるか」


六番隊隊舎にが入ってきたとき、隊員の手が止まった。
時が止まったように固まる一同に、は舌打ちすると辺りを見回す。
その視線の先にいたのは、副隊長阿散井恋次。
隊員たちはが恋次に向かって歩いて行くのを見ると、密かに合掌した。


「阿散井。朽木は?」


背後からかけられた声に恋次はびくりと反応する。
そしてぎぎぎ、とも聞こえそうな感じで後ろを振り返る。


、さん………」


引きつった笑みを浮かべて、恋次は応対する。
するとは眉を顰めた。


「見りゃ分かってんだろ。で、朽木は?」
「朽木、隊長ですか………?」
「その朽木だよ。ったく、何回言わせる気だよ………」


面倒だともいわんばかりには溜息をつく。
そのついでに、ぎろりと恋次を睨むことも忘れない。
恋次は身も凍る思いだ。


「く、朽木隊長ならまだお戻りになられてないと思いますが」
「ああ、そうか。なら、いい」


白哉が不在と聞くとは、あっさり踵を返した。
その潔さに六番隊隊員一同は何かの前触れかと思ってしまう。
そして、が外に出ようとしたとき。


ガラッ


「「……………………」」


運が悪いのか、良いのか、見事に白哉とは鉢合わせた。
再び、場が凍りつく。
それもそのはず。
この六番隊隊長朽木白哉と九番隊第三席
共に学び、成長した幼馴染だが―――――







その仲は凶悪に悪かった。























「なにをしている」


入ってきた白哉の眉間の皺も三倍増しだ。
同時にも強く白哉を睨みつける。


「………俺はただ書類を持ってきただけだっつーの」


書類を押し付けるように白哉に手渡すと、は白哉と擦れ違う。
その擦れ違い際、の腕を白哉が掴んだ。


「あ?まだなんかあんのかよ」
「――――…………」


にしか聞き取れないような声で白哉は言う。
それを聞き取ったはいやーな顔をした。
その表情を見て、周りは焦る。


(じ、地雷踏んでます、朽木隊長ーっ!!)
(つか、マジで凶悪な顔してますよ、さんッ!!)


思いは様々だが願うことはただ一つ。
状況が悪化して、二人とも斬魄刀を持ち出してこないかだ。
それほどまでに緊迫した空気が漂っていた。



「じゃ、俺行くから。失礼しました、朽 木 隊 長 」



最後に氷のような笑みを浮かべて、は去った。
その後ろ姿を睨みつけるように(隊員たちにはそう見えた)、白哉は見ていた。
そして、その後ろで。


(〜〜っ、何も起こらなくてよかったッ!)


そう安堵する恋次の姿があった。





























そして、白哉の指定した場所、指定した時間。
二人はそこで対峙していた。


「………………………」
「………………………」


あのときと同じように鋭い目つきで互いを見詰め合う、二人。
傍から見れば一触即発のその状況。

先に笑い出したのはだった。


「あっはっは………お前の顔、サイコー」


そのしかめっ面ありえねー、とは大声を上げて笑った。
それにますます白哉は皺を刻む。


「お前なー、もうそんな顔しなくていいんだぞ?ここは俺とお前以外知らない場所なんだから」


白哉の皺を指で強制的に伸ばしながら、は言う。
そんなの様子を見て白哉は微かな笑みを浮かべた。
そしてごく自然に唇を重ねる。


「ん、………なんだよいきなり」
「ここしばらく触れていなかったのでな」


先手を取られたは軽く舌打ちすると、お返しのように白哉に抱きついた。
大して身長差は無いが、それを白哉はびくともせず受け止める。


「…………そりゃ、さ。俺たちいつのまにか、凶悪なくらい仲が悪いってことになってるから迂闊に近寄れねぇし。白哉だって分かってるだろ?俺たちの家、妙に意識し合って張り合ってんだから」
「……ああ」
「今日だって隊舎を出るとき、言われたぜ?『朽木隊長と決闘ですかー?』ってな。違うっつーの。…………そういう風に見えるようにしたけど」


も不満だったようでぎゅうぎゅうと腕に力を込めながら、白哉に愚痴る。
朽木家と家。
それぞれ位に大差は無いが、昔から両家は張り合っていた。
お陰でその家の子である白哉とは昔から、朽木家・家には負けるなと吹き込まれていた。
が、二人は幼い頃遊んでいるところを偶然会ってしまい、意気投合した。
家なんか関係無しに。
まあ、そのうち………恋心なんか芽生えて秘密のコイビト同士なんかになったりして。
二人は死神になった。

表向きは仲の悪い、犬猿の仲の家同士の息子という形で。


「淋しかったのか?」
「な……っ!」


不意に囁くように言われ、はどきまぎする。
その反応は、言葉にしなくても白哉に淋しかったと伝えていた。


「私は淋しかったが」
「お、俺も淋し……か、ったけ、ど」


だんだん消えていきそうな声では答えた。
その耳は真っ赤だ。
真っ赤で、可愛い反応をするに白哉は優しく唇を降らす。





それはまるで、足りない時間を補うようで。





「くすぐったい、白哉」
「じっとしていろ」


甘えるように抱き締めてくる白哉は、の死覇装をずらすとギリギリ見えないラインに吸い付いた。
チリリ、とした甘い痛みが伝わってきて、は瞳を眇めた。
そしてやり返すように、白哉の首筋に顔を埋める。


「ッ……」
「よし……うまく付いた」


隠し切れない場所に、は跡をつけた。
綺麗に咲いた紅いそれを見て、は満足そうに笑う。


「これでしばらく虫除けになる」
「それは私の言葉だ」


どちらともなく顔を近づけて、と白哉はもう一度唇を合わせた。
今度は触れ合うとかそんな可愛いものじゃない。
恋人同士の、ものだった。


「ちょ、白哉………っ、いつまでや………ぅんッ」


終わらせろ!!と胸を叩いたりなんだりと訴えるが相手は手強い。
仕方なく、好きなようにさせてやるとあっさりと開放された。


「お前、な………手加減っちゅーものを考えろ」
「前に言っただろう。私はお前に手加減はしない」


さらにもう一度、と唇を求められる。
なんだかんだいって白哉に甘いは呆れたように、それに答えた。

















今はただ、甘いくちづけを。























短い時間を惜しむように、二人は何回も同じ事を繰り返した。



















(6969/夕之進さまリクエスト。ありがとうございました!)