「あははははは!阿近さん、現世のSF小説でも読み過ぎたんですか?」
一瞬の沈黙の後、は笑い飛ばした。
そんなのありえない、と言いながら阿近を見やる。
つられて否定し、笑っていたと思っていた阿近は――――いたって真剣だった。
「冗談言ってねぇぜ。お前もそれが分かるから………笑ったんだろう」
阿近のその言葉に、す、との表情が変わる。
阿近は当たりを掴んだと、確信し、笑う。
これはもう、駆け引きだった。
「――――だとしたら、貴方は俺をどうしますか。このまま、通告しますか」
「いや、やめておく。信じられない方の確率が高いからな」
「………それなら一体、どうしたいんです?」
「協力――――したいんだよ」
純粋に、時の歪みについての興味もあったのだろう。
阿近の目はやはり輝いていた。
それを見て軽く溜息をつきながら、は言う。
「協力、とは?具体的に何を」
「お前さん、戻りたいんだろう。元の時間に」
「まあそうですね。帰れるものなら帰りたいです」
「俺は科学者だ。……研究すれば、人為的に歪みを発生することできなくても、発生条件ぐらいは分かるだろうさ」
「それはとても魅力的ですね」
は微笑んだ。
確かに――――阿近の申し出は嬉しい。
阿近の科学者としての腕はどうやら申し分ないようだし、口も堅そうだ。
何より………元の時間に帰れるかもしれない。
そのことが一番、嬉しい。
「もちろん、これは契約だ。俺はこのことを誰にも言わない。自分ひとりで研究する」
「で、俺はその研究に協力する、と……?」
「ああ。悪い条件じゃないはずだ」
阿近は自分の興味を満たすことができるし、新たな研究成果も得られる。
は阿近を口止めすることができるし、元の世界に帰ることができる。
利害は、一致していた。
は頷く。
それに阿近は明るく笑った。
「よし、そうと決まったらもう遠慮はいらねぇな」
「……どういう意味ですか、それは」
「互いに秘密を共有する仲になったんだ。いつまでも余所余所しく敬語なんて話してらんねぇだろ。そりゃ少しは話した方がいいけどよ。いつまでも他人面されんのは嫌だな」
それにまだ強張った顔、してやがる。
阿近はそう言って、の額を小突いた。
いきなりの行動に、額を押さえながら阿近を見る。
「な、なにするんですか……!」
「するんですか、じゃなねぇだろ」
「――――何するんだ、一体っ!」
素を現したは精一杯、阿近を叩いた。
阿近は痛そうに頭を抑えている。
やりすぎたか?とが慌て始めたとき。
阿近が顔を上げた。
その目に、笑い涙を浮かばせて。
「…………あーこーんーさーん?」
人で遊んだな、と呟くはすっかり打ち解けていた。
阿近はそんなの髪をぐしゃりと掻き回す。
「うわ、ちょ、阿近さんっ!?」
「子供は子供らしくしとけ。どーせお前、ここで一番若いんだろうし。で、お前何歳だ?」
「………辛うじて二十歳です」
「うっわ、若い。ここじゃひよこだな。ひ よ こ 」
わなわなとの拳が震える。
市丸にだって、そこまで子ども扱いされたことは無い。
理不尽だ。
が、阿近を睨む。
技術開発局に、不釣合いな笑い声が響いた。
「なんだ、なんだ?やけに賑やかじゃねぇか」
「おう、海燕か。久しぶりだな」
ちょうど、がまた阿近に髪の毛をぐしゃぐしゃにされているときだった。
海燕が、訪れたのは。
「ん?そこにいるのはこの間会ったじゃねぇか。阿近、何してんだよ、に」
「あー?見ての通りだ。可愛いひよこを可愛がってる」
「ひよ……っ、阿近さん、まだ言いますか!」
暴れるを軽く宥めながら、阿近は言う。
海燕はそんな二人の様子に、面白そうに瞳を眇めた。
「俺がひよこなら海燕さんと阿近さんはもう、よぼよぼの鶏ですねっ!!」
「「ほ〜……………」」
の爆弾発言に、年長二人組はゆらり…とを見やる。
まずった、地雷踏んだ。
がくるりと踵を返す前に、二人が取り囲む。
「それじゃ、若いひよこによぼよぼの鶏サンが教えてやるよ」
「あァ、そうだな。たっぷり世の中の怖さってやつを思い知らせてやるぜ」
二人楽しそうな表情が瞳を見ればすぐに分かる。
今度は、技術開発局にの悲鳴と阿近と海燕の楽しそうな笑い声が響いた。
――――無論、が隊舎に帰れたのはもう日が沈む頃で。
出迎えてくれたのは、市丸・藍染・小町の三名。
小町は呆れたようにを見て。
市丸と藍染はただ、笑っていた。楽しそうに。
そして構われすぎてぐったりとしたは、海燕の肩に担がれて、ようやく辿り着けたのであった。
海燕はまた笑って別れ際に、もうぐしゃぐしゃのの髪を更に乱した。
夕焼けが眩しい。
夕焼ノスタルジー
(どこか、懐かしさを覚えるよ。楽しく笑いあうことに。)
(海燕さんと阿近さんは同期設定でお願いします)